マニラの夜
マニラ市エルミタといえば、かつてはアジア一の歓楽街だったという
今はパサイやマカティに押されその面影もほとんどなくなってしまっ
たが、ひっそりと影をひそめて営業しているお店もまだ少なくない。
私はその中の一軒のお店を訪れた。そのお店はその当時からあるお店
で、名前こそ変わったりしているが営業はまだ続けていた。ここは当
時の「リム市長」(*1)の取締りにも引っかからずにここまで営業
を続けてきたお店である。裏通りにこっそりあるようなお店である。
そこを訪れたのは夜の帳が下りた頃、午前1時を過ぎた頃だった。店
に入ると店内のお客の7割は女の子だった!それも店に入った瞬間に
およそ40人ほどいた女の子全員がいっせいにこちらを見る。一瞬た
じろいだが、ひるまずに奥のテーブルへ。 ドリンク(*2)を頼み
やっと落ち着いて店内を見渡す。店の広さはテニスコートくらいであ
ろうか。60人ほどのお客のうちの40人くらいが年頃の女の子であ
る。知らないで入っていればなんとも変わった印象を受けるであろう
お店である。男性客の多くはフィリピン人と白人(アメリカ人?)と、
韓国人達である。日本人の男性客もチラホラ来ているみたいである。
奥のほうに座ってしまった為、なかなか全部の女の子の顔を見ること
が出来ない。仕方がないのでトイレに行く振りをしてチェックする事
にする。ゆっくりと女の子の顔を見まわしながらトイレに行くと、そ
の気のある女の子が「ピクッ」と眉毛を動かし(*2)こちらに合図
を送ってくる。脈ありだ。そのとき通路のそばで赤い服を着た一人の
可愛い女の子を見つけた。しかし、トイレに行く為に席を立っている
ので、とりあえずトイレに行く。用を足している間に彼女が他の男に
盗られないか心配になってしまった。帰り際に声をかけようと思った
が、声をかけることが出来なかった。なぜなら恥ずかしかったのであ
る。ここはゴーゴーバーではないので、自分のほうから声をかけなく
てはいけないのである。しかしうじうじしていても、女の子のほうか
らは声をかけてきてはくれないので、勇気を出してアタックしてみる
勇気を出して声をかけてみた「ハロー何か飲まない?」こちらのおど
おどした感じとは裏腹に、彼女はにっこりと笑って「一緒に飲みまし
ょう」と言ってくれた。席をこちらに移し、二人でビールで乾杯した
彼女の名前は「ハニー」19歳で学生だという。ここへは週末に気が
向いたときだけ来るという。「ナボタス」(*3)に住んでおり、こ
こまで来るのに一時間ほどかかったという。彼女のあどけない笑顔に
すっかり参ってしまった。私は笑顔というものに弱いのである(笑)
楽しく飲めたお礼に100ペソをわたすと、「ありがとう」といって
ポケットにしまいこんだ。そして私達は電話番号を交換してわかれた
*1 リム市長 昔のマニラ市長。マニラ市で「麻薬撲滅キャンペー
ン」や「風俗廃止キャンペーン」を行った人。フィリピンの政治家の
中では「真面目だ」といわれている。大統領選に出馬した事もある。
*2 眉毛の挨拶 フィリピンに行くと良く行われるのがこれ。知っ
てる人に会うと眉を動かし挨拶の代わりとしたり、相手の返事もこれ
ですることも多い。器用に片方の眉だけ「ピクッ」とやるのである。
*3 ナボタス マニラ市の少し北にある。大雨が降ると大洪水にな
ってしまう所である。スクオッターもとても多く、「治安が悪い」と
いわれ、現地の人もあまり行きたがらない場所である。日本人旅行者
の方がいくのであれば特に注意が必用である。近寄らないほうが無難
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