ドマゲティの夜3


あるとき彼女はうれしそうな顔をしてやってきた。サインのあ
「離婚届」 をもらってきたのだ。これに彼女がサインすれば
離婚は成立だ。親権者の欄も空欄のままである。
「やった」
っと2人は自由になれたのだ。そう思ったのもつかの間で、彼
女がわたしにこう話し始めた。子供は日本の国籍のままがいい
「なぜ?」 何かあったときに私は日本にいれるでしょう? 子
供が日本人ならば…私は言葉に詰まった。
「私とちゃんと結婚
すれば、日本にずーっとだっていれるよ」
「でも…」 初めて、
このときに二人の間に亀裂が走りました。

「彼女は心から私のことを心から信じている訳ではないのだ」
と私は感じました。でも
「私は信じよう」 と思いました。それ
がいままで彼女と暮らし、そして彼女の家族と暮らしてきたそ
れが私の心の支えでありました。私はこう彼女に話しました。
「いつでも結婚できるよ…」 「でも待って、もう少しだけ…」
私は彼女のその言葉の意味がわかりませんでした。私はそのと
きまた
「フィリピンに行こう」 と決めました。フィリピンの彼
女の家にいって
「ちゃんと挨拶をしてこよう」 それが私にでき
る、唯一彼女に対する正しいことだと思ったのです。


フィリピンから帰ってくると、わずか4日間のあいだに彼女は
いなくなっていました。どこへいってしまったのでしょうか…

しばらくして彼女から電話がありました。久しぶりに聞いた彼
声の声はとても元気で、思わずうれしくなってしまいました。

しかし彼女の元気な声とは裏腹に、彼女との電話での会話はと
ても重く、私のすき間だらけの心にふかく突き刺さりました。

私以外に女がいるのでしょう?
いるわけないじゃない。そんなことないよ。
うそつき。貴方には女がいるわ。絶対に。

私に必死の説得にも耳を貸しません。私はどうしようもなく途
方くれました。しかしどうすることも出来ません。彼女がどこ
にいるかもわからないのです。つながっていた電話もついには
応答しなくなり、ついには電話のベルさえも鳴らなくなってし
まったのです。2ヶ月、3ヶ月とすぎ、私の気持ちにも変化が
見え始めたころ、風の便りで元気だと聞いて、何故だかほっと
したような気もちになりました。どうしてだかわかりませんが

私はだまされていたのでしょうか? いいえそれは違うとおも
っています。そこまでの悪い女の子だとは思っていません。彼
女を信じ、彼女を愛していたほんの僅かな時間は、私にとって
かけがいのないものとなりました。その一瞬の想い出は多分一
生忘れることはないでしょう。それほどまでに私は彼女の事を
愛していたのです。いまでも彼女を思いだすことがあります。
それは決してつらい思いとかではなく、それは元気で、幸せに
暮らしている彼女の姿です。彼女のあの明るくて、元気な笑顔
を思い出すと今でもなにか不思議な感覚になるときがあります

ひょんなことでドマゲティの彼女の家の前を通りました。家の
外に人影はなく、声をかける勇気も持ち合わせていない私は、
その場を後にしたのです。3ヶ月をすごしたその家を…

あの時、私に必用だったものはなんだったのでしょうか?
あの時… 美しい町並みはあいかわらずその姿をとどめ、人々
は町をのんびりと行き交い、もしかしたらその中に自分がいた
かと思うと、後悔なのか、なんなのか、はっきりしない気持ち
のまま、私はドマゲティの美しい町に別れを告げたのでした。


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